海洋子午面循環 - 南極沿岸で冷やされた海水は、大西洋・インド洋・太平洋の津々浦々を旅する。

「海洋子午面循環」、または海洋コンベアベルトとしても知られるシステムは、地球上で熱と物質を再分配するための重要な仕組みです。南極沿岸で形成された最も密度の高い海水は、大西洋、インド洋、太平洋へと北に向かって流れ出すことで、海洋子午面循環を維持するための中心的な役割を担っています。

このプロセスは、南極大陸の冷たい「カタバ風」が海面に吹き付けることで海氷が形成され、その周囲の海水から高塩分・高密度な水が排出されることから始まります。そこで形成された塩分が高く冷たい南極沿岸の水は、海底へと沈み込み、やがて南極底層水として知られる水塊が形成されます。

高密度水の沈み込みと南極底層水の形成は、海洋の南北方向の循環を駆動します。この水は海洋底を北へと流れ、最終的に3つの大洋の盆地に達します。そこで、この水が運んでいた熱と溶解物が再分配され、長期的な気候パターンに影響を与えます。これが海洋子午面循環の概略です。

IPCC SROCC (2019)


ところが、最近の研究によると、地球温暖化の進行に伴って海洋子午面循環を停滞する可能性が指摘されています。地球温暖化が進むと、グリーンランドと南極の氷床の融解により、大量の淡水が海洋へと流入し、海洋の塩分を下げて水を軽くすることで、沈み込みの能力が低下する恐れがあります。こうした変化は現場観測からも示唆されており、全球の気候パターンや海洋生態系に重大な影響を与える可能性があります。

海洋子午面循環とその潜在的な影響をより良く理解するために、私たちは海洋現場観測、数値シミュレーション、衛星観測データ等を組み合わせて研究しています。このシステムについて研究することは、海洋循環の変化が、数10年から数1000千年単位の気候変動に対して、どう影響するかを理解することにつながります。