南極海のダイナミクス - 変わりゆく地球気候に対して、どう応答するか?

南極海は、南極大陸を取り囲む海で、地球の気候システムにおいて重要な役割を果たしています。地球上で唯一東西方向に境界がなく、南極大陸をぐるりと一周する海であり、太平洋や大西洋よりも広い面積を誇ります。南極海は、強い海流、強風、大きな波が特徴であり、夏でも海氷が存在するため現場観測が非常に困難で、いまだ多くの謎に包まれた領域です。

近年、南極海は水温、塩分、海氷の劇的な変化を経ており、これらは気候変動に関係しています。地球温暖化が進む中、南極海は他の海洋よりも速く温暖化しており、過去半世紀で0.5-1℃程度の温度上昇が観測されています。

IPCC SROCC (2019)

これらの変化を引き起こす主要なメカニズムの一つは、南極海を占める南極周極流(Antarctic Circumpolar Current)です。この海流は、南極周りに東向きに流れ、冷たい南極沿岸を暖かい赤道域の海から隔てるバリアとなっています。しかし、南極周極流の強度や位置は、風のパターン、海洋渦の活動など、さまざまな要因に影響され、変動します。

南極海の変化は、世界の気候にも大きな影響を与えます。たとえば、南極海は大気中の二酸化炭素を最も多く吸収する海域ですが、海洋が温暖化すると、二酸化炭素を吸収する能力が低下し、温室効果ガスの更なる増加を招く可能性があります。

したがって、南極海とその気候変動への反応を理解することは、地球温暖化の影響を予測し、緩和するために重要です。私たちの研究は、南極海のダイナミクスと、それに関連した海洋-大気-氷河システムの相互作用の理解を目指しています。